相談者のNさんは、祖父の不動産が、祖父や父が亡くなった後も30年以上にわたりそのままになっているのでどうにかしたいとのことで、弁護士のもとに相談に来ました。
具体的な事情としては、
・相談者の祖父(Mさん)は、30年以上前に亡くなりました。
その後、相談者の父も亡くなっています。
・祖父(Mさん)の遺産としては、不動産(土地・建物)がありました。
しかし、その不動産は、現在まで30年以上、空き家のままとなって放置されていました。
・その結果、祖父(Mさん)の不動産は、相続により、Mさんのお子さんたちや、相談者のNさんを含むお孫さんたちが共有する状態となっていまいた。
このように、相続の結果、多数の相続人が不動産を共有している状態を「メガ共有」ということがあります。
「メガ共有」状態となっている不動産は、権利関係が多数の相続人に枝分かれしてしまっているため、建物を取り壊すにも、不動産を売却などするにも、他の相続人の了承がなければ解決を進めることができない、という問題があります。
Nさんとしては、この不動産の権利をすべて引き取って、自分で管理したいと考えていました。
しかし、相続人が多人数いる上、会ったこともなければ、どこに住んでいるかも分からない状態で、どのように解決したらいいのか、悩んでいました。
そこで、Nさんは、これ以上、自分での対応は難しいと判断し、弁護士に対応を依頼しました。
この相談を受けた弁護士は、まず、相続人調査を行って交渉相手を確定した上で、無償ですべての不動産の権利を譲渡してもらえるように、できるだけ角が立たないように努力して交渉することにしました。
この不動産は、現在、会ったこともなければ、どこに住んでいるかも分からない、しかも多人数の相続人の方々に、権利が枝分かれした状態にありました。
そこで、まずは、そもそも、不動産の権利を、どこに住んでいる誰が持っているのかが分からなければ、交渉を始めることができません。
弁護士は、「職務上請求」という権限を持っており、代理人業務に必要な範囲で、戸籍謄本や住民票等を取得して、相続人の方々の氏名や住所を調査することができます。
このケースでは、相続人調査の結果、祖父(Mさん)の不動産は、Mさんのお子さんたちやお孫さんたちの合計14人が相続した状態にあり、日本中各地に住所があることが分かりました。
相続人が分かれば、次に、Nさんの代理人弁護士としては、無償ですべての不動産の権利を譲渡してもらえるように、相続人の方々と交渉していくことになります。
しかし、突然、弁護士から文書が届くと、警戒心や敵意を持たれてしまうことがあります。
文書を受け取る方々としては、何も悪いことをしているわけではないのですから、そのような気持ちになっても、ある意味では当たり前かもしれません。
Nさんとしては、無償で、相続人全員の方から不動産の権利を譲渡してもらいたいわけですから、できるだけ、角を立てたくありませんでした。
そこで、弁護士としては、文書を送る前に、できるだけ、連絡先の分かっている方・面識のある方には、Nさんから直接、電話であいさつ・説明を行っていただき、素人では分からないから専門家の弁護士に依頼しているだけだという旨を話していただくようにして、交渉のお膳立てを行いました。
また、この交渉は、Nさんが個人的利益を得る目的で行っているわけではなく、空き家となっている祖父(Mさん)の不動産をきちんと管理したいという目的で行っているものであることを、まずは直接からNさんから話していただき、後日、弁護士からも同様の説明を行うようにしました。
弁護士の交渉も、努めて友好的に、失礼のないように配慮をしながら進めていきました。
このように交渉のお膳立てを行って仁義を切った上で、弁護士から電話・文書で相続人の方々と交渉を行った結果、比較的スムーズに、相続人全員の方から、不動産の権利を無償で譲渡することができました。
以上のとおり、多数の相続人に権利が枝分かれしている「メガ共有」状態の不動産についての問題、そして相続問題全般を解決するためには、相続に関する弁護士の交渉経験・交渉スキルが重要となる場合があります。
そのため、相続問題でお悩みの方は、相続問題に精通した弁護士に相談されることをお勧めいたします。