相談者のOさんは、突然、T市役所から、見たことも聞いたこともない土地(山林)について、固定資産税を支払うように通知書が届きました。
通知書によると、相談者の曾祖母(Mさん)が持っていた土地(山林)について、一部の権利を相続していることから、固定資産税を払ってほしいとのことでした。
Oさんは、相当前に亡くなったはずの曾祖母(Mさん)には会ったこともないし、その土地(山林)は見たことも聞いたこともありませんでした。
Oさんとしては、見ず知らずの先祖の、見たことも聞いたこともない土地について、何も分からない状況でした。
そして、このような状況でも固定資産税を支払わなければならないのか、とても不安に思っていました。
そこで、Oさんは、相続専門の弁護士に相談し、相続放棄を依頼することにしました。
相続においては、先祖の不動産について、遺産を分けるための話し合いがなされず、長期間にわたってそのままにされているケースが多数見られます。
その結果、先祖の不動産について、多数の子孫に相続が起こって、権利関係が複雑になってきてしまうことになります。
今回の件も、そのようなケースです。
そもそも、Oさんとしては誰の相続について相続放棄をすればいいのか、分からない状況からのスタートでした。
そこで、弁護士としては、Oさんの先祖の家族関係や亡くなった時期を調査する必要がありました。
これを「相続人調査」といいます。
相続人調査のためには、戸籍謄本等を取り寄せる必要があります。
しかし、ご本人さんに戸籍謄本等を取り寄せていただく場合、いろいろな役所に繰り返し請求しなければならず、とても手間や時間がかかります。
相続放棄には、3か月の期間制限があり、調べている間にこの期間が過ぎてしまうと、相続放棄が認められなくなりますので、とても重大な問題です。
弁護士は、「職務上請求」という制度を使って、必要な戸籍謄本等を取得する権限を持っています。
そこで、Oさんから依頼を受けた弁護士は、速やかに職務上請求をして、Oさんの先祖の家族関係を明らかにしました。
その結果、
ことが分かりました。
そうすると、曾祖母(Mさん)の持っていた土地(山林)について、
ことになります。
そうすると、Oさんの立場では、祖父(Nさん)の相続について、相続放棄をすればいいことが分かりました。
相続放棄の申立て(正式には「申述」(しんじゅつ)といいますが、ここでは分かりやすく「申立て」と表現します。)は、基本的に、相続が起きたことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
弁護士としても、3か月の期間を超えてしまうと相続放棄ができなくなりますので、いつから3か月以内に相続放棄をすればいいのか、慎重に見極める必要があります。
この点について、くわしくは、以下のページをご覧ください。
さて、今回のケースでは、Oさんは、幼いころに両親(Oさんの母親と父(Tさん))が離婚していた結果、曾祖母(Mさん)、祖父(Nさん)、父(Tさん)のいずれについても、そもそも亡くなったことを知りませんでした。
そうすると、Oさんは、今回、突然、T市役所から固定資産税の支払いを請求する通知書が届いたことによって、はじめて、祖父(Nさん)の相続が起きたことを知ったことになります。
そこで、弁護士は、相続人調査を速やかに進めた後、すぐに家庭裁判所への相続放棄の申立てを行い、ご依頼から1か月で、相続放棄を完了させることが出来ました。
以上のとおり、相続放棄の申立てを成功させるためには、
といったことなどについて、複雑な調査や判断をしなければならないことがあります。
法律的な判断を間違えたり、期間内に申立てが完了できなかったりすると、相続放棄に失敗して、固定資産税や借金などを相続してしまうことになってしまいます。
そのため、相続放棄を検討されている方は、相続問題に精通した弁護士に相談されることをお勧めいたします。