Eさんは、CさんDさんと、2人の相続について話し合いをしていました。
その話し合いの中で、CさんDさんは、まだ、未分割の母親の遺産があり、生前母親Aさんの面倒を見ていたことを理由に、Bさんの相続について法定相続分を大きく上回る額を取得するという主張を固持していました。
Eさんは、CさんDさんが母親Aさんの面倒を見ていたことに一定の理解を示し、譲歩をしていました。
しかしながら、CさんDさんは、意見を全く変えることなく、一向に納得を得られませんでした。
そして、AさんとBさんの相続について、遺産分割調停を申し立てられてしまったため、困ったEさんは、今後のことについて、弁護士に相談しました。
Eさんから相談を受けた弁護士は、まず、Aさんの相続、Bさんの相続について、財産がどの様に相続によって移転しているかを確認することにしました。
そうしたところ、Aさんの遺産はBさんに全て相続させるという内容の遺言があることがわかりました。
そこで、調停の中で、Aさんの遺産は全てBさんに移転していること、あとはBさんの遺産分割についてのみ考えればいいこと、法的にはAさんに対する貢献は、Aさんの相続の際に解決するべきものであり、遺言により既に相続は終わっているということを強調し、Aさんについての遺産分割調停の申立てを取り下げさせることに成功しました。
Bさんの遺産分割では、法定相続分での分割を検討しましたが、母親Aさんのことも調整し、調停から3ヶ月で、最終的には相談者が当初相続人との間の話し合いで提案していた額に近い額で解決することができました。
遺産分割にあたっては、相手方が法律に従ったものではない内容の提案をしたり、自らの貢献を認めて欲しいということで、話し合いが行き詰まるということが多くあります。
弁護士は、相手方の言い分に法的根拠があるのか、こちらの言い分が法的根拠に基づいているものか、を証拠等に照らして考えていきます。
法的判断を伴うところを独自の判断で行ってしまうと、誤った見通しで事を進めてしまい、解決までにさらに時間がかかってしまうこともあります。
しっかりとした見通しの元に、話し合いを進めていくことが大切になります。
本事案で大きく問題となった争点について説明します。
遺産分割の話し合いをする上で、生前の贈与といった特別受益がしばしば問題となり、話し合いが行き詰まる原因となっています。
どういったものが「生計の資本としての贈与」となるのか、どういったものが特別受益と言えるのか、誰から誰に対する贈与が特別受益となるのか、そういったことは、専門家にとってもなかなか判断が難しい場合があります。
本事案では、遺言で母親Aさんの相続が完了しているにも関わらず、その母親Aさんからの贈与もBさんの相続で考慮をするように主張をされていました。
結論としては、本事案では、母親の際の特別受益と主張していた部分については、Bさんの遺産分割では全く考慮に入れることなく算定がされることになりました。
特別受益というものがどういったケースで考慮されるのか、専門的な知識が問われるところとなります。
特別受益について詳しくはこちらをご覧ください。
寄与分とは、相続人等の立場から期待される以上の特別の貢献をしたという場合に、その方の相続に際して、一定の考慮を行う制度です。
この寄与分の制度は、一見して外部には分かりにくいことも多いため、それが寄与分と言えるものとなるのかしばしば問題となります。
本事案では、母親Aさんの際に行なった貢献と、Bさんに行なった貢献の両方共が主張されていました。
そして、Bさんの相続の際にもAさんへの貢献を考慮しなさいという主張がされていました。
母親Aさんへの貢献が、そもそも「寄与分」となるのかということや、その「寄与分」の主張を、Bさんの遺産分割に持ち込むことがそもそも許されるのか、といった問題がありました。
結論としては、本事案では、母親の際の寄与分と主張していた部分については、特別受益と同様に、Bさんの遺産分割では全く考慮に入れることなく算定がされることになりました。
弁護士が入り、法的に主張できないことであることをしっかり主張していくことが、無関係な主張を減らし、早期に解決できるケースも少なくありません。
寄与分について詳しくはこちらをご覧ください。
適切な見通しなどをつけるためにはその分野に精通した弁護士に依頼する必要がありますので、まずは相続に強い弁護士に相談することが解決への第一歩となります。