サポート無 | サポート有 | 利益 | |
---|---|---|---|
財産分与 | 0円 | 900万円支払う | 900万円増額 |
婚姻費用 | 0円 | 月額10万円支払う | 月額10万円増額 |
Aさんは、15年前に夫と結婚しました。
結婚してすぐの頃、Aさんも夫も会社員として働いており、お互い安定した収入を得ていましたが、結婚後数年経つと、夫は会社を設立したいと言い出しました。
Aさんは、夫が会社を設立するにあたり不安があったものの、Aさんもそれなりの収入を得ていたことから夫の意向を尊重したいと考え、家計の心配はいらないこと、できる限りの協力をすることを夫に伝えました。
実際に、夫が会社を設立するための資金や、会社設立直後の業績が悪い時期の費用工面について、Aさんが独身時代に貯めたお金を夫に貸してあげたり、Aさんの親が夫にお金を貸したりもしました。
その結果、夫の会社は次第に業績をあげていき、Aさん夫婦の生活にも余裕が出てきました。
Aさんとしては、このまま夫と添い遂げるつもりであったため、AさんやAさんの親が夫に貸したお金について返済を求めることは特にしませんでした。
ところが、会社が軌道に乗り出すと、夫が自宅に帰ってこない日が次第に増えていきました。
Aさんは、自身の仕事が忙しかったことに加え、夫も仕事が軌道に乗って忙しいのだろうと特に気に留めていませんでしたが、最終的に夫は別に賃貸マンションを借りて、自宅に帰ってくることはなくなりました。
また、当初は支払っていた生活費も支払わなくなりました。
そして、夫は、そのような生活を続けた後に、Aさんに対して離婚を求めてきました。
Aさんは、夫の気持ちが離れているのではないかと感じてはいましたが、まさか離婚まで考えているとは思っていませんでした。
そのため、夫の申入れに非常に驚くとともに、会社が軌道に乗った途端に、これまで様々なサポートをしてきたAさんを簡単に切り離そうとする夫に非常に悲しい気持ちになりました。
また、夫は、離婚はしたいと言うものの、AさんやAさんの親が貸したお金を返すことや財産分与をする姿勢は見受けられず、ただ離婚届の署名押印を求めるばかりでした。
そこで、Aさんとしては、薄情な夫との離婚はやむを得ないけれども、しっかり財産分与等をしたいと考え、当事務所の離婚弁護士に相談しました。
まず、弁護士は、Aさんの代理人として、夫に受任通知を送りました。受任通知を送ることで、すべての連絡の窓口が弁護士となるため、Aさんが薄情な夫とやり取りをする必要がなくなりました。
また、弁護士は、離婚協議には応じるものの、離婚が成立するまでの間は、毎月生活費(婚姻費用)を支払うよう要求しました。
さらに、財産分与をすること、夫の会社設立にあたりAさんやAさんの親が貸したお金を返すことも要求しました。
これに対して、夫も代理人弁護士を立てて回答してきました。
回答書では、生活費については支払いに応じるものの、財産分与については大きく争う旨の記載がしてありました。
また、AさんやAさんの親が夫に貸したお金についても、借用書等を残していなかったことから、一部借りたことを認めようとしませんでした。
夫としては、会社が軌道に乗った後、会社の経費等を用いて、Aさんも散々贅沢をしたのだから財産分与として渡すお金はないといった主張でした。
当事務所の弁護士は、なんとか協議で解決できないかと相手方の弁護士と交渉をしましたが、相手方が貸金の返済含め支払える金額はMAX500万円との主張を譲らなかったため、やむを得ず調停に移行することにしました。
調停では、改めて貸金の返済や、財産分与を求めていきました。
貸金の返済については、借用書等は残っていませんでしたが、Aさんの預金の出金履歴や会社の設立時期を照らし合わせる等して、具体的な数字を出して相手方の説得をしました。
また、財産分与についても、相手方としては触れられたくない会社の株式の分与等を求めていき、粘り強く財産の追及をしていきました。
しっかりと婚姻費用の請求もしていたことから、相手方も早期解決を望み、最終的には、相手方がAさんに対し、900万円の財産分与の支払いをする形で調停を成立させることができました。
本件のメインの争点について解説します。
本事案では、①貸金、②自宅不動産、③夫の会社の株式をどのように扱うかが問題になりました。
まず、①貸金については、借用書等は残しておらず、また定期的に返済をしてもらっていたという事情もなかったため、訴訟になった場合には、お金を返してもらうために必要な証明をすることが難しい状況でした。
しかしながら、Aさんの預金の出金履歴や会社の設立時期を明らかにし、夫にお金の工面の方法等を追究することで、夫も一定の範囲で貸金があったことを認めてくれました。
次に、②自宅不動産について、夫が自宅不動産を取得することに争いはなかったものの、自宅不動産はAさんと夫の共有名義になっており、また住宅ローンについては連帯債務となっていました。
このままでは、万一夫が住宅ローンを支払わなかった場合に、Aさんに住宅ローンの請求が来てしまうことから、調停を成立させるにあたっては、夫に住宅ローンの借換手続きを求め、Aさんを連帯債務者から外す約束をしました。
最後は、③夫の会社の株式についての取り扱いです。
夫の会社の株式が財産分与の対象になることに争いはありませんでしたが、株式がどの程度の価値をもつかは争いになり得ました。
ここで、株式の価値を具体的に算出していく方法もありましたが、ここ数年の会社の業績が思わしくなく株価が低い可能性が高かったこと、Aさんとしては株式は不要であったこと、夫としても株式は分けたくないと考えていたことから、弁護士とAさんとで話し合って、株式については具体的に評価をしていくのではなく、財産分与全体の交渉の材料として取り扱うことにしました。
その結果、株式の価値は曖昧なままでしたが、最終的には財産分与額は900万円という、協議時を400万円上回る形での解決をすることができました。
このように、財産分与は、すべての財産の詳細を明らかにするばかりではなく、臨機応変に対応することで満足のいく結果を得られることもございます。
当事務所では、財産分与について詳しい弁護士が多数在籍しておりますので、迷われたらお気軽にご相談ください。
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