サポート無 | サポート有 | 利益 | |
---|---|---|---|
養育費 | 16万円 | 20万円 | 月額4万円増額 |
財産分与 | 1350万円 | 2700万円 | 1350万円増額 |
慰謝料 | 200万円 | 700万円 | 500万円増額 |
年金分割 | 50% | 50% | – |
婚姻費用 | 16万円 | 20万円 | 月額4万円増額 |
Mさんは、夫と婚姻後に2人の子どもをもうけましたが、夫のモラルハラスメント気質に悩み苦しんできました。
そのような折、Mさんの夫の不倫(不貞行為)が発覚しました。Mさんの夫は医師でしたが、経営する病院にアルバイトに来ていた学生と不貞関係になりました。
それが直接の原因となり、Mさんは離婚を決意し、別居しました。
Mさんは、離婚する以上は、自分と子どもたちが生活に困ることがないように、経済的な利益の確保を最優先に考え、当事務所の弁護士に相談しました。
当事務所の弁護士がMさんにヒアリングしたところ、Mさんにはすぐに離婚を成立させたいという考えはなく、生活の安定に重きを置いていました。
そのため、弁護士は、まずは、婚姻費用の調停を申し立てました。
婚姻費用の調停では、金額に争いがあったものの、最終的には裁判所案を受け入れる形で月額20万円で調停が成立しました。
Mさんは離婚を急いでいなかったことから、一旦、依頼は終了しましたが、約2年後に、Mさんの夫は、離婚訴訟を提起してきました。
弁護士は、有責配偶者の抗弁(離婚原因をつくった配偶者からの離婚請求は認められないという判例法理)を主張して、離婚の棄却を求めるとともに、Mさんに対して今後の進行を綿密に打合せました。
Mさんは遠方に住んでいたため、担当弁護士との打合せは、電話とオンラインを通じて行いました。
その結果、以下の方針をとることにしました。
そして、裁判所に対して、「離婚は棄却が相当であるが、仮に離婚する場合を前提に、財産分与の整理を行いたい。」と回答し、Mさんの夫に対し、財産開示を求めました。
Mさんの夫は、財産資料の一部は任意で開示しましたが、一部は開示しませんでした。
そこで、弁護士は、調査嘱託を申立て、裁判所から金融機関に照会をかける形で、整理を進めました。
その結果、基準時に存在した財産が、約2700万円あることが分かりました。
そのうえで、弁護士は、裁判所とMさんの夫側に対して、上記の方針を伝えました。
上記の条件は、あまりにも厳しいものですが、Mさんは有責配偶者の抗弁が通り離婚が棄却になるならそれはそれで構わないと一貫して考えていたため、弁護士も強気で主張しました。
その結果、Mさんの夫側も、上記の条件を受け入れないと離婚は成立しないということを悟り、その結果、Mさんの望む条件で、裁判上の和解により離婚を成立させることができました。
本件の争点である離婚事由(有責配偶者の抗弁)、財産分与、慰謝料について解説します。
裁判所が離婚を認めるのは、民法の規定により次の5つの場合に限定されています。
本件は、Mさんの夫が不貞行為を行っているため、離婚を求める夫に①の離婚事由があります。
その場合、裁判所は原則として離婚を認めません。
長期間の別居、未成熟子がいないこと、離婚により経済面を中心に過酷な状況に陥らないことという要件を満たす場合に、例外的に離婚が認められるにすぎません。
本件では、Mさんの夫の不貞行為は証拠からも明らかでした。
そのため、Mさんは強気の主張ができ、財産分与と慰謝料で、裁判所の基準を大きく超える金額を獲得することができました。
もっとも、このようなスタンスをすると、和解が決裂する可能性も高くなります。
本当に離婚が棄却になっても良いと考えている場合しかおすすめはできませんので、進行の方針についてはよく弁護士と打合せすることが大切となります。
財産分与は、基準時(原則は別居時)の財産について、各人名義で何があるかを開示しあい、財産整理一覧表を作成するのが現在の裁判実務の主流です。
しかし、本事案のように、相手方が、基準時の財産について一部を開示しないということは珍しくありません。
その場合には、金融機関の口座の存在さえ特定していれば、裁判所に対して調査嘱託を申し立てることで、金融機関から取引履歴の開示を受けることが可能です。
本件でも弁護士は、調査嘱託を申立て、Mさんが認識していた全てのMさんの夫名義の財産を整理することが可能となりました。
財産分与について、くわしくはこちらをご覧ください。
慰謝料は、離婚の原因が相手方にある場合に発生します。
不貞行為がその原因の場合には、裁判所は、200万円程度を基準に、各事案ごとの事情で増減額を決めているように思います。
本件は、離婚時に裁判所が認めうるであろう慰謝料の金額を大幅に超える700万円を提示し、合意することができました。
裁判基準を大幅に超える慰謝料を得るには、自分の立場の法的な優劣を理解したうえで、どれくらい妥結したいのか(決裂すると困るのか)等の慎重な判断が必要となります。
誤解がないように、依頼する弁護士と方針についてよく話合いを行うことが大切です。
慰謝料について、くわしくはこちらをご覧ください。
離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。