サポート無 | サポート有 | 利益 | |
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離婚 | 不成立 | 成立 | 成立 |
親権 | 争いなし | 獲得 | ー |
養育費 | 月額3万円 | 月額4万円 各進学時14万円 |
月額1万円増額 進学時一時金計42万円 |
面会交流 | 月2回 | 月1~2回 | - |
財産分与 | 約50万円 | 500万円 | 約450万円増額 |
慰謝料 | - | - | - |
年金分割 | 50% | 50% | - |
婚姻費用 | 0円 | 月額6万円 | 月額6万円 |
Mさんは、10年前に夫と結婚し、2人の子宝に恵まれるなど幸せな生活を送っていました。
しかしながら、結婚後5年程経つと、お酒に酔った夫がMさんに暴言を吐いたり、物を投げたりするようになり、酷いときは子ども達の前でビンタをされたこともありました。
Mさんは、夫への愛情は冷めきっていたものの、幼い子ども達のためにと離婚を思いとどまっていました。
夫は、お酒に酔ってMさんに酷い態度をとることはあるものの、お酒を飲まなければ暴言や暴力もなく、子ども達にとっても良いパパであったためです。
そのため、Mさんは夫にお酒をやめるよう何度もお願いをしましたが、夫がお酒をやめることはなく、飲酒時の暴言や暴力はエスカレートしていくばかりでした。
Mさんは、このままだと大けがを負わされるかもしれないという恐怖や、お酒を飲んだ時のMさんへの暴言や暴力が子ども達の目の前でも行われることから、このまま婚姻関係を継続することで子ども達にも取り返しのつかない悪影響を与えるのではないかと考えるようになりました。
そこで、Mさんは、夫との離婚を決意し、弊所の離婚弁護士に相談に来られました。
夫にDVの傾向があったことから、相談を受けた弁護士は、Mさんに速やかに夫との別居を開始するよう促しました。
また、子ども達の面倒は主にMさんがみていたことから、別居の際は子ども達も一緒に連れて出るよう助言をしました。
そして、Mさんが自宅を出てすぐに、弁護士から夫に対し、協議離婚申入書を送付し、代理人(弁護士)をとおして離婚に向けて協議をしたいことを伝えました。
また、協議離婚申入書には、仮に別居をしていても、夫にはMさんや子ども達の生活費(婚姻費用)を支払う法的義務があることを記載し、別居後の生活費の支払いも求めていきました。
これに対して、夫は、自ら弁護士に電話をしてきましたが、当初は離婚はしたくないと主張しており、婚姻費用もなかなか支払おうとはしませんでした。
しかしながら、夫の話もしっかり聞いたうえで、Mさんの離婚意思が固いことや、Mさんとしてはできれば円満に解決したいと望んでいること等を伝えると、夫も次第に離婚について前向きに検討してくれるようになりました。
Mさんが、離婚後の子ども達と夫との交流(面会交流)が円滑にいくように、できれば、協議も円満に進めていきたいとの考えであったことから、弁護士は、Mさんの権利の確保を目指す反面、夫の言い分や主張を否定しすぎないよう、バランスを見ながら慎重に交渉を進めていきました。
そのため、夫は弁護士をつけることなく自身で話合いに応じてきましたが、夫の仕事が多忙になったことをきっかけに途中から夫も弁護士を代理人にたてて話合いを進めていきました。
夫は、争いたいという気持ちで弁護士をつけたわけではなく、自分での対応が難しいために弁護士をつけたのであり、夫としても円満に解決したいという気持ちをもっていると話す程、交渉は双方冷静な形で進めていくことができました。
夫にも弁護士がついたことで、婚姻費用や養育費の月額については、適正額に近い形で話がまとまりましたが、財産分与の大部分を占めていた、「学資保険」をどのように取り扱うかについてはなかなか話がまとまりませんでした。
Mさんとしては、学資保険については全て解約をした上で、解約返戻金を2人で分けたいと考えていました。
学資保険は夫名義でしたが、Mさんの収入を考えると夫からMさんに名義を変更して学資保険を継続していくのは難しい状況でしたし、夫名義で学資保険を継続する場合には、夫が途中で保険を解約するリスクや、満期金を支払ってもらえないリスクがあったためです。
しかしながら、夫は、学資保険は子ども達のために継続していきたいと考えていました。
夫は、離婚時に渡すお金はないけれども、学資保険を継続することで得られる、満期金や入学祝い金は全て都度支払うと主張していました。
夫は、今保険を解約すれば損失がでるとの考えもありましたが、子ども達のために少しでもプラスになることをしたいという考えからそのような主張をしていました。
弁護士としては、夫の主張を受け入れることで結果的に得られるお金は大きくなるものの、支払いを先送りにすることで不払いのリスクが生じることを懸念していました。
特に、Mさんも夫もまだ若かったこともあり、再婚の可能性も十分に考えられたため、Mさんにはメリット・デメリットをしっかりと説明した上で、どうするか検討をしてもらいました。
結果的に、Mさんとしても学資保険を継続することを選択されました。
そのため、弁護士は、少しでもMさんのリスクが減るような合意書作りを模索し、仮に夫が学資保険を解約するようなことがあっても、保険の有無に関わらず満期金に相当する額が支払われるような内容で夫と合意をすることができました。
本件のメインの争点について解説します。
本事案では、財産分与の対象となる学資保険をどのように扱うかが争点となりました。
学資保険については、満期金が対象となるわけではなく、財産分与の基準時における解約返戻金相当額が財産分与の対象になります。
学資保険については、実際に解約をして解約返戻金を分けるという選択や、親権者が学資保険を継続して、財産分与の基準時における解約返戻金相当額の半分を相手方に渡すという選択をされる方が多いと思います。
本事例では、親権者とならない方の親が学資保険を継続するという珍しいケースであり、先延ばしにされる支払をしっかり確保するための合意内容とする必要がありました。
本事例や分割払いの場合等、支払いが先になるケースでは、合意の仕方に特に気を付ける必要があるため、そのような合意を考えられている方は、事前に弁護士に相談することをお勧めいたします。
財産分与について、くわしくはこちらをご覧ください。
学資保険の財産分与について、くわしくはこちらをご覧ください。
離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。