早期の示談交渉が実を結んだ事案

執筆者
Iさん
罪名
建造物侵入
解決までの期間
1ヶ月
弁護活動の結果
示談成立(被害届提出もされず)
建造物侵入
の解決事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

事実の概要

Iさんは、性風俗店を利用し、同店従業員Mさんからサービスの提供を受けている間に、自己が用意したボイスレコーダーを用いてその様子を盗聴しました。

盗聴器は市販のボイスレコーダーでしたが、盗聴していることが悟られないように、ベッドと壁の隙間に置いて設置していました。

Iさんは後日また訪れたときにその部屋で回収をしようと考えていましたが、なかなか訪れることが出来ず、回収は済んでいませんでした。

そんな中、IさんがMさんのブログを読んでいると、暗にIさんに対し、Iさんが盗聴したことに気付いていると伝えるようなメッセージととれる記載がありました。

Iさんはそれを読み、「Mさんそれからお店から被害届が出されてしまうかもしれない。」、「既に提出されているかもしれない。」、「お店とMさんに謝罪をしたい。」と考え、弊所刑事事件部の弁護士に相談にきました。

 

 

相談対応、方針の検討

相談に入った弁護士は、以上の事実経過を聞かされました。

盗聴行為自体は犯罪にはならないことを告げました。

そのうえで可能性があるとすれば、盗聴目的を秘して当該性風俗店に入って盗聴器を設置したことについて、建造物侵入罪が成立することだとも告げました。

相談に入った弁護士が確認した限り、MさんのブログでIさんに対して暗にIさんの行為を非難するようなメッセージは読み取れませんでした。

もっとも、部屋に設置したままの盗聴器がやがて部屋の清掃などで発見されてしまい、警察に届け出られてしまう可能性も十分にあると考えました。

Iさんの意思としても、自分が犯してしまった過ちについて誠心誠意お店とMさんに謝罪したいとのことでした。

そのため弁護士は、弁護士を介してお店とMさんとの間で示談をするのはどうかと提案し、Iさんもこれに了承しました。

 

 

示談交渉の経過

弁護士はすぐに当該性風俗店に架電し、代表者の方に、Iさんのしてしまったことを打ち明けるとともに、Iさんがそれについて猛省しており、誠心誠意謝罪させてもらいたいと言っていることを告げました。

お店としては盗聴については全く知らなかったようでしたので大変驚いていました。

もっとも、事実を告げた後も特にお叱りになるわけでもなく、冷静に対応してくれました。

その後弁護士は、Iさんと打ち合わせをしました。

被害届が出ていないとはいうものの、今後翻意して出される恐れもIさんは懸念されていました。

そのため弁護士は、Iさんからお店とMさんに対して迷惑料というかたちで金銭をお支払いし、かわりに今後一切本件について被害届を提出したり、損害賠償を請求したりしないことについて示談書を交わして約束することはどうかと提案し、Iさんはこれに同意しました。

弁護士から相手方の店舗代表者及びMさんに以上の内容を告げ、了承いただきました。

示談の主な内容としては、①Iさんから店舗及びMさんに示談金を支払うこと、②店舗及びMさんはIさんの謝罪を受け入れ、以後本件について被害届を出したり損害賠償を求めたりはしない、というものでした。

店舗代表者及びMさんともに、Iさんが早期に自らの意思で罪を打ち明け謝罪をしてきたという姿勢に感心したようで、お叱りになるどころか、「よければ今後も当店舗を利用してもらいたい。」というお言葉までいただきました。

自己のしてしまった罪悪感に苛まれた日々を過ごしていたIさんでしたが、当事者間での和解が無事成立したことから、事件終了の報告の際には非常に晴れやかな気持ちですと仰っていました。

 

 

盗聴自体は犯罪ではない?

盗聴自体は犯罪ではありません。

しかしながら、文中でも述べた通り、盗聴器を設置する目的での建物への立ち入りは、その建物の管理権者の意思に反する立ち入りであることから建造物(住居)侵入罪が成立することがあります

また、盗聴器設置のためにその建物内の器具を破壊した場合には、器物損壊罪が成立するおそれがあります。

 

 

決して自分だけで示談交渉をしないこと

示談する上で重要なのは、自分だけで示談交渉をしないことです。

こちらは加害者である以上、相手方からの理不尽な要求に応じさせられやすく、結果として示談金名目で法外な金銭を支払わされるおそれがあります

また仮に法外な金銭支払い要求を受けなかったとしても、示談をするにあたっては、将来「示談金を支払った。」、「支払っていない。」や「こういう条件で合意した。」、「していない。」というトラブルが生じないようにすることが肝要です。

弁護士が代理で示談交渉をする際には、双方にとって納得できるような示談条件をアドバイスし、将来にわたってトラブルが再発しないかたちでの終局的解決を図ります

せっかくお相手と示談をするのであれば、最適なかたちでの示談をすべきでしょう。

専門弁護士に相談されることを強くおすすめいたします。

 

 

被害届が出ていなければ示談は意味がない?

示談と言えば、被害者から既に被害届が出されていて、示談金を支払う代わりにそれを取り下げてもらうというのが一般的です。

では、被害届が出されていない段階では示談ができないのかといいますと、そのようなことはありません。

今後も被害届を提出しない、という内容で合意してもらうことはできます

実際今回のIさんの場合も被害者から被害届は提出されていませんでしたが、「今後も提出しない。」という内容で示談に合意してもらうことが出来ました。

 

 

最後に

示談は早ければ早いほどいいです

今回は、早期の示談交渉が実を結んだ最たる例だと思います。

示談でお悩みの方は、ぜひ一度信頼できる弁護士に相談してください。

 

 



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