無実の罪で相手から金銭を脅しとられるのを防いだ事案

執筆者
Aさん
50代
罪名
強制わいせつ、恐喝
解決までの期間
1週間
弁護活動の結果
刑事事件化せず
強制わいせつ
の解決事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

事実の概要

Aさん(50代男性。独身。)は、婚活アプリで知り合ったKさん(40代女性。独身。)とメッセージで意気投合し、直接会うことになりました。

Aさんは、Kさんと会う前のメッセージのやり取りで、Kさんとの間で「好き」や「早く会いたい」というメッセージを何度もやりとりしていました。

そのようなやりとりをするなかで、AさんはようやくKさんと直接会うこととなりました。

一緒に食事をした後、Aさんは、Kさんを自宅近くに送っていく車内で、Kさんとキスをしました。

その後、二人はそれぞれの自宅に帰りましたが、直後のLINEのやりとりでは二人が付き合いたてのカップルのようなやりとりが繰り広げられていました。

しかし数日後、Kさんは突然Aさんに対して、車内でのキスが嫌であったこと、また実際にはそういった事実は全くないにもかかわらず、AさんがKさんを無理やり押し倒して性的暴行を加えようとしたと主張し始め、高額な示談金の支払をしないと警察に被害届を提出すること、また、Aさんの会社に電話して自身が受けたとする被害の申告をすること、またAさんの家族にも危害を加えると主張し始めました

要求は全てLINEを通じてなされ、時には1日で100件に及ぶこともありました。

困り果てたAさんは、①自己の身の潔白を証明したいこと、②Kさんからの要求に対処してもらいたいということで、弊所刑事事件部の弁護士に相談に来ました。

弊所に相談にこられたときのAさんは、連日連夜Kさんから寄せられるメッセージで、Kさんをブロックしたいものの、ブロックをすれば逆上したKさんからありもしない事実を警察に言われるかもしれないという葛藤で悩まされ、食事も喉を通らず一睡もできていない状態でした。

 

 

相談対応、方針の検討

相談に入った弁護士は、以上の事実経過を聞かされました。

その後、Aさんが相談の際に持参したKさんとのLINEの記録を見ました。

すると、上記の事実経過と整合するLINEの記録が確認できました。

弁護士は、①AさんがKさんの意思に反して無理矢理キスをしたという事実がないこともちろんのこと、AさんがKさんを襲って性的暴行を加えたという事実もないこと、②KさんがAさんを脅し、多額の金銭を要求してきており、これは恐喝罪に該当するということを確認しました。

そこで弁護士は、Aさんが、Kさんに対して無理やりわいせつ行為をした事実は一切ないにもかかわらず、Kさんから恐喝の被害を受けているという内容で被害届を提出することを提案し、Aさんもこれを了承しました。

また、Aさんが一人で被害届を提出したり、自己が疑いをかけられているわいせつ行為についての事情聴取に対応するのは不安だと言ったため、弁護士は警察署に連絡のうえ担当警察官との間で訪れる日を調整し、当日はAさんにも同行しました

なお、この際に弁護士の方からざっくりとした事実の概要を告げておき、当日の本人への聞き取りがスムーズに行えるようにもしました。

また、当日までに、Aさんの主張する事実関係を立証する内容のLINEメッセージを証拠化しておき、当日警察官に参照してもらえるようにもしておきました。

 

 

警察署への同行

当日、弁護士はAさんに同行し、警察署を訪れました。

弁護士から事前に連絡を入れて調整をしていたこともあり、当日はとてもスムーズに対応してもらうことが出来ました。

Aさんは、Kさんから虚偽の被害申告がなされ自身が性犯罪の被疑者として扱われてしまったり、自身に脅迫メッセージが届いたりすることさえ防げればよかったという意思を有していました。

そのため、警察からKさんに厳重注意をしてもらい、それにKさんが応じる限りは、正式な被害届の提出をすることまではしないこととしました

警察は、Aさんと弁護士が被害申告をした当日にKさんに連絡をしてくれました。

警察からは、Kさんに対して、Kさんの行為が恐喝罪に該当し立派な犯罪であること、今後も継続するようであれば警察が動かざるを得なくなるということを告げてもらいました。

Kさんは二度としないことを約束し、無事本件は解決しました。

 

 

今回のポイント

今回は、Aさんが早急に弁護士に相談に来たため、弁護活動の初動を早くとることができたのがよかったです。

今回のようなケースでも、実際に被害者が真実に反する事実を告げて被害届を提出してしまえば、最悪の場合Aさんは逮捕されていたかもしれません

また、実際に被害届が出されていないとしても、Aさんとしても、「自分を捕まえに警察がくるのではないか。」という不安を抱えたまま過ごすことにもなり、精神的にも非常に辛い日々を送ることとなります。

人によれば、怖くなって相手に言われるがままに金銭を支払ってしまうかもしれません。

どちらにしても、トラブルを察知したら早い段階で弁護士に相談することで、初動を早くとることができ、こちらに有利な結果をもたらしやすくなりますから、早急に弁護士に相談するというのは非常に重要なポイントです。

 

 

弁護士が自首に同行してくれるとメリットはある?

メリットはいくつか考えられます。

まずは、①弁護士が同行してくれるので、心強いということです。

これから自首する方にとって警察署は敵というわけではありませんが、少なくとも味方ではありません。自首を心に決めたとしても不安がいっぱいで足取りは重くなるでしょう。弁護士が同行し、「大丈夫ですよ。」などと勇気づけてくれるだけで、本人はとても心強くなります。

次は、②違法な取り調べを防止できるということです。

残念ですが、令和になった現在でも捜査機関からの高圧的な取調べ(怒鳴る、机を叩く、脅すなど)は散見されるところです。

もっとも、弁護士が一緒に警察署を訪れ、取調べ室内までは同行できないとしても近くで待機していれば、捜査機関にとってはプレッシャーになりますし、下手な取調べはできないでしょう。

また、捜査官からの質問に対してどう回答すべきか迷ったとき(例:質問の意味が理解できない等)には、取調べを中座して待機している弁護士と相談することもできます。

また、③逮捕・勾留のリスクを減少させることが出来るということもあります。

逮捕・勾留するためには、「この人を身体拘束しておかないと、逃げたり証拠隠滅したりする可能性が高い。」といえる必要があります。しかしながら、弁護士を伴って捜査機関に自ら出頭した人について、その可能性は低くなるといえます。

 

 

最後に

刑事は特に、早急に対応することが重要です。

いわゆる美人局のような被害に遭った場合、周囲への相談がはばかれることもあるかと思います。

しかし、早ければ早い方がとりうる選択肢も多く、自体も有利に進められる可能性があります。

ぜひ勇気を出して信頼できる弁護士に相談されることをおすすめいたします。

 

 



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